14 Sep キネマの神様 ベテラン山田洋次監督の快作
これはなんと言っても、撮影に入る直前、主人公を演じる予定だった志村けんがコロナによって死亡した悲劇を思い出す作品です。日本でコロナが蔓延する発端の悲劇でした。代役を務めたのが、ジュリーこと沢田研二。監督志望だった男が、夢破れて大酒飲みでキャンブル狂いの老爺になっているんですが、孫に助けられて、撮影を放棄した作品の脚本を現代的に描き直したものが、コンテストで優勝し一躍注目の人となります。それだけの単純なストーリーラインですが、前半が若き頃、後半が爺さんになった現在という構成。若い主人公は管田将暉、おじいさんがジュリーです。一言でいえば、映画讃歌の作品。山田洋次監督のベテランの技で、フォーリンググッドの暖かい作品に仕上がっています。特にエンディングは、しみじみとした情感に溢れ、感動しました。そこいらの監督がさか立ちしても、こういう雰囲気は出せません。主人公が助監督をしていた映画がスクリーンに写され、北川景子扮する大女優がスクリーンから飛び出してきて、客席にいたジュリーに手を差し伸べ、映画の中へ連れて帰るファンタジーの死ですが、とてもいいです。こういうシチュエーションは、チャップリンが元祖だそうですが、それは未見で、ウディ・アレン監督ミア・ファローの「カイロの紫のバラ」が初体験です。これも映画への愛がほとばしった良作だと思いました。さて、この映画を志村けんが演じていれば、いい意味でのタイプキャストでドンピシャだった思いますが、ジュリーもとてもいいです。ジュリーは全盛時代、イケメンとかハンサムなんかではくくれない綺麗な男だと思っていましたが、今では太ってその面影はゼロですが、ジュリーはジュリーですね。実際少し痩せれば、イケてるおじいちゃんになるのは間違いなし。管田を始め、脇の、北川、寺島しのぶ、宮本信子、小林稔侍など揃って好演で、次の日本アカデミー賞では多くのノミネーションを出すのではと予測します。
80点
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